70歳になった。
若い頃には想像もしなかった年齢だ。
思えば高校生の頃に読んだ『20歳の原点』が、私の人生に少なからず影響を与えたのかもしれない。
当時の私は、自殺願望がありながら死ぬことは恐ろしいという、矛盾だらけの人間だった。
生きる意味とは何か。
人はなぜ生きるのか。
そんなことばかり考えていた。
それから50年以上の歳月が流れた。
仕事に追われ、家庭を持ち、悩み、別れや出会いを繰り返してきた。
気が付けば人生の最後の直線に差しかかっている。
最近、不思議なことがある。
50年前に離れた一人の女性のことを思い出すのだ。
彼女は小学生からの同級生だった。
高校も同じ。
同じ部活に所属し、卒業後は地元を離れて札幌へ出てきた数少ない仲間の一人だった。
1974年だったと思う。
世の中はディスコブーム。
スリー・ディグリーズやビリー・ジョエルの曲が流れ、若者たちは未来が永遠に続くような気分で踊っていた。
男性はアイビールックやコンチネンタルスタイル。
女性はニュートラファッション。
記憶違いもあるかもしれないが、そんな時代だった。
就職して数か月。
最初は大人しかった私も、少し仕事に慣れてきたのだろう。
札幌へ出てきた同郷の仲間たちと集まり、よくディスコへ通った。
汗だくになりながら同じステップを踏み、同じ音楽に身を任せる。
若さ特有の一体感に酔っていた。
その輪の中に、いつも彼女がいた。
今になって思う。
彼女はいつも私のすぐそばにいたのだ。
だが、その時の私は気付いていなかった。
あるいは気付かないふりをしていたのかもしれない。
先日、高校の卒業アルバムを開いた。
何十年ぶりだろう。
ページをめくっていると不思議なことに気付いた。
彼女のクラス写真の中にあった個人写真だけが、きれいに切り抜かれていたのだ。
大きさにして5センチほど。
いつ切り抜いたのか。
なぜ切り抜いたのか。
まったく記憶がない。
しかし、その写真を切り抜いたのは間違いなく私だ。
忘れていたはずの記憶が、その小さな空白から静かによみがえってきた。
部活の集合写真を見ると、私の隣には彼女がいた。
いつも明るく、やさしく微笑んでいた。
その笑顔を見た瞬間、胸が締め付けられるような思いになった。
そして気付いた。
私はあなたに何も告げずに去ってしまったのだ。
理由は二つある。
しかし、その理由については今は書かない。
それを語るには、まだ少し時間が必要な気がする。
ただ一つ言えるのは、あの頃の私は若く、自分勝手で、人の気持ちを考える余裕がなかったということだ。
そのことを今でも後悔している。
その後、私は結婚もした。
離婚も経験した。
人生にはいくつもの分岐点があった。
仕事を辞めた時。
両親を見送った時。
家庭を失った時。
介護の仕事に就いた時。
人生の大きな決断を迫られるたびに、不思議とあなたのことを思い出していた。
なぜなのだろう。
私にもよく分からない。
ただ、あなたは私の人生のどこかに、ずっと居続けていたのだと思う。
今、あなたはどうしていますか。
元気に暮らしていますか。
あまり身体が丈夫な方ではなかったよね。
どうか健康でいてください。
そして、もし幸せな人生を歩んでこられたのなら、それが何より嬉しい。
私はもう70歳になりました。
だから今さら何かを求めているわけではありません。
人生をやり直したいわけでもありません。
ただ、一つだけ伝えたい言葉があります。
元気でいてくれてよかった。
そして、あの時は申し訳ありませんでした。
2026年夏
70歳になった同級生より