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「いらっしゃませ~」

 中にいた受付嬢達は一斉に私に視線を向けた。

ある大手のサラ金、今ではテレビコマーシャルでも大々的に宣伝している。

作った笑顔の奥には「またカモが来た。」とでも思っているのだろうか?

受付嬢   「初めてですか?」

俺     「はい」

受付嬢 「こちらの申込用紙にご記入お願いします。」

俺は始めてのサラ金ということで緊張していた。

名前・住所・生年月日・職業と少々震える手で記入していった。

ふと手が止まった。

既婚に○を書いた時、心が痛んだ。

妻の名前や子供の名前を書く事にひどく後ろめたさを感じた。

まして両親の名前住所を書く時にはピークを迎えた。

俺はペンを止めた。

口の中が乾きっていた。

差し出されていた、氷が融けて量が増えた麦茶を口に含んだ。

そしてまた記入用紙に向かった。

書いている間、受付嬢はメモを取り2度ほど私の前から消えてはまた現れた。

全て書き終わった時

受付嬢「在籍の確認が取れました。」と、作り笑顔で言った。

在籍の確認?メモを取っていたのは電話番号だったとその時初めて知った。

俺の前から消えたのは裏で実家や会社に電話していたのだ。

「そうか在籍確認というんだな。」心の中でつぶやいた。

「会社や家には分からないですよね。!」少々強い口調で私は言った。

「実家の方は間違い電話ということでかけました。職場の方は個人名で

呼び出しさせてもらいました。大丈夫ですよ。」

「慣れたもんだ。」そう口から出そうになったが、呑み込んだ。

受付嬢「今回のご融資額はおいくらご希望ですか?」

俺  「10万円」

受付嬢「少々お待ちください。」席を立ち奥から目を光らせていた男と何か話していた。

戻ってくるなり

受付嬢「今回は30万円までご融資可能ですが、いかがいたしますか?」

私はなんのためらいもなく

「それじゃそれでいいです。」

「どうもありがとうございます。」受付嬢は笑った。

この位すぐ返せるさ。馬券が当たれば軽いものだ。

これが私の最初のサラ金地獄への一歩だった。

競馬を楽しむという余裕のない破綻者馬券の始まりであり、ギャンブル依存症と呼ばれる病気の始まりだったのかも知れない。

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